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今回は「川崎病」です。小児科では最重要疾患の一つです。1967年に日本の川崎富作先生が報告し、その後、WHOで”Kawasaki Disease”と認められたのが1978年です。
1.原因不明
この病気は4歳以下に多いのですが、長年、原因が研究されているにもかかわらず、未だに不明です。何らかの感染症か、免疫の問題があるのか、先天的なものなのか、色々な説が出ては消えています。
僕も大学病院などでは多くの川崎病を診ましたが、毎週川崎病の入院が続いたりしたことが何度もあり、いかにも「流行」があるような状況も何度かありました。医者仲間で「川崎病はやっぱり感染症か?」と言い合ったこともありました。
2.検査ではなく、症状で診断する
川崎病は検査で診断しません。以下の図の「症状」で診断します。
①発熱、②両側眼球結膜の充血、③口唇紅潮・いちご舌、④リンパ節腫脹、⑤手足の変化(浮腫や発赤)、⑥発疹(BCG接種痕の発赤も含む)の6つのうち、「5つ以上」あれば川崎病と診断します。また、「4つしかなくても」超音波検査で「心臓の冠動脈瘤」などの冠動脈病変があれば川崎病と診断されます。
2019年から診断の手引きが少し改訂され、以前はBCG接種痕の発赤は「副症状」で主症状ではなかったのでしたが発疹に含まれ、発熱も5日以上だったのが、日数は問わないことになりました。昔は発熱が何日目か、指で数えたりしたものですが、今は1日目でも症状に含めます。つまり、診断基準が少しゆるくなったのです。これは以前の基準では川崎病かどうか、診断に悩む場合も少なくなかったからだと思います。
BCG接種痕については、元々、BCG接種後は下の写真ように正常でも4週後頃に周囲が発赤する時期があります。
写真にある川崎病のBCG接種痕は発赤の部位がやや広く、形もいびつに見えますが、必ずしもこの通りではないので、「他の症状」と合わせて診断すべきです。
血液検査も行いますが、白血球が増えたり、CRPという炎症を示す数値が高くなったりしますが、川崎病に特有のものではありません。
3.いったい体に何がおこっているのか?
原因不明ですが、「全身の血管炎」を起こします。特に心臓の冠動脈瘤の有無が注目されます。
4.治療
治療の目的は冠動脈病変の対策です。発症10日後頃に冠動脈は炎症による瘤や拡張をを起こしやすくなります。まずは炎症を抑制する目的でガンマ・グロブリンを大量にゆっくり静脈投与します。血栓(血の塊)を防ぐためにアスピリン内服もおこないます。これらの治療が主に行われ、心臓の超音波検査を定期的に行い、冠動脈の様子を観察します。
施設によって差はありますが入院期間は7日―10日間が多いようです。中にはガンマ・グロブリンが効かない例があり、ステロイド薬など様々な追加治療が考えられています。
冠動脈に瘤や拡張ができた場合は、程度により抗血栓療法や抗凝固療法も行われます。
退院後も必要に応じて薬を内服し、定期的に通院し、心臓の検査(心電図や超音波検査)を行います。
5.川崎病は増えている
下のグラフで見る限り、年々、川崎病は増加してます。
6.最後に
世界には原因不明の病気はたくさんありますが、川崎病は小児科には重要な疾患にもかかわらず、原因は不明です。しかし、もっとも大切な冠動脈の病変への治療や経過観察方法はほぼ確率されています。原因は不明でも治療法はある、という不思議な病気でもあります。