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ライノウイルスとは?鼻汁や咳、鼻汁中好酸球検査のお話


<ライノウイルスとは>

鼻水が主な症状となる感染症にライノ・ウイルス感染症があります。昔から存在する、ありふれたウイルスですが、あまり聞くことがないウイルスだと思います。

内科や小児科のクリニックでも医師から「原因はライノ・ウイルスでしょう」などと説明を受けた人もあまりいないと思います。

しかし、下の図のようにライノ・ウイルスは風邪ウイルスの原因として半分近くを占めます。約10年前の統計ですが、現在も大きな変化はないと思います。

ライノとはrhinoと書き、「鼻水」という意味で、このウイルスは鼻汁が主な症状であることからrhino virusと命名されました。

図にある様に100種類以上のタイプ(型)があり、これは1度かかっても、他のタイプのライノウイルスに何度でも感染する、という事です。

<ライノウイルスの症状>

ライノウイルス感染症の症状は鼻汁の他、鼻閉、鼻漏、咽頭痛、そして微熱です。微熱なので本人も元気。家族も「軽い風邪」程度に考えてしまう事も多いのではないでしょうか。医者も「鼻風邪ですね」と説明するでしょう。

基礎疾患に気管支喘息があると、喘息発作を起こしたり、咳がひどくなる可能性があります。

ライノウイルスは鼻腔(鼻の穴)付近の33℃くらいの温度で増殖しやすい、という研究結果があります。

もっと奥の気管支や肺では体温が高くなるため、体の奥の方では増殖しにくいという可能性があります。

<ライノウイルスの迅速検査はない>

マスコミやニュースにこの「ライノ・ウイルス」が取り上げられる事は少なく、その結果、一般の方への認知度も少ないのです。そして、新型コロナウイルスやインフルエンザウイルスなど、近年は「迅速検査」で診断可能な微生物が増える中、ライノウイルスには迅速検査が今のところありません。上図のグラフは研究目的での特殊な検査の結果です。この特殊な検査は一般のクリニックはもちろん、大きな病院でも一般外来患者にはやらない検査なのです。

もしライノウイルスの迅速検査が可能で、結果が陽性となれば、インパクトが強く病名も広まるでしょう。ただし、ライノウイルスはもし、迅速検査が可能で陽性だとしてもいわゆる「対症療法」しかありません。鼻汁などに対しての薬が処方されてもウイルスそのものに対する薬は無いのです。しかも、高熱が出るわけでなく、元気であれば受診せずに登園や登校している子供たちも多いかも知れません。

<検査ができないメリット、デメリット>

実は医師として、ひとつ不安があります。もし、患者さん家族に「ライノウイルスかも知れません」と説明した場合、家族、園や学校側も馴染みがないウイルス。医師側が昔からある鼻風邪ウイルスです、と説明しても、聞き慣れない病名に、家族も園側も驚いてライノウイルスに恐怖心を持つかも知れないのです。

子供が元気でも、鼻水があれば「ライノウイルスの可能性があるので、病院にいってください」という園側の要望、指示が増える可能性があります。いや、増えるでしょう。

勿論、どのウイルスでも感染するのは親御さんも心配で、園や学校も子どもを守る立場です。先述のように、

このライノウイルスには現在、検査方法はありません。微熱か平熱、鼻汁や鼻閉があれば、このウイルスの「可能性がある」という推測です。このウイルスへの特効薬もありません。大きな目でみれば昔からある「鼻かぜ」です。

<鼻汁の症状、“血管運動性鼻炎”>

秋から冬は鼻水が増える季節です。ライノウイルスの他、インフルエンザウイルスやコロナウイルスなど鼻汁や咳をおこすウイルスは数多くあります。しかし、ウイルスが関与しなくても気候や天気の影響でも鼻汁や咳となる場合も多いのです。

「血管運動性鼻炎」という疾患名があります。花粉やダニ、ハウスダストなどのアレルギーを持っていないのにまるでアレルギー性鼻炎のような鼻汁、くしゃみ、鼻づまりがおきます。皆さんも寒い場所に出たり、熱い食べ物、辛い食べ物で鼻水が出ることがあると思います。一般には中高年以上に多いとされていますが、実際は小児にも多いと思います。中高年には心身の疲れが自律神経に影響を及ぼすことも原因の一つとされています。ただ、現代では、小児でも学校、学童、塾、習い事などが多く、知らないうちに自律神経に不調をきたす例も多いのではないでしょうか。

天候は何ともできませんが、体や精神的な疲れは小児にも配慮が必要かも知れません(息抜きも大切)。

<鼻汁中好酸球検査>

さて、原因にかかわらず、鼻炎症状があれば、その治療は抗ヒスタミン薬が処方されることが多いかと思います。抗ヒスタミン薬は元々、アレルギー抑制の薬です。ウイルス感染自体はアレルギーではなく、また血管運動性鼻炎は先述のようにアレルギーは関与しません。現実的には診察時にはアレルギーが原因なのかの判断は難しく、さらにアレルギー検査の経験があり、ダニやハウスダストが陽性であっても、今の症状がアレルギーが原因かの判断が難しいところです。そこで「鼻汁中好酸球検査」というのがあります。患者さんの鼻腔(鼻の中)の入り口に綿棒の先を入れ、鼻汁をしみこませ、それをスライドグラスにこすって、検査会社に送り、顕微鏡で鼻汁を観察。好酸球が多いか少ないか、を判定します。好酸球が増多していれば「何らかの」アレルギー(2月から5月頃の鼻汁ならスギ花粉の可能性あり)が原因の可能性があります。

鼻汁がないと綿棒で鼻汁が採取できないので、鼻汁が多い時に検査を行う必要があります。

そして、アレルギーの原因の特定には採血検査が必要になります。

色々書いてきましたが、鼻汁や咳を含めた風邪症状には実は特効薬がありません。抗アレルギー薬内服、鼻閉が強ければ点鼻薬、痰がからむのであれば去痰薬。そして咳には意外とハチミツの効果が確認されています。処方された感冒薬とハチミツも試すのもいいかもしれません。ただし、ハチミツにはボツリヌス菌が含まれている可能性もあり、1歳未満の小児は摂取しないよう、注意が必要です。1歳以上のお子さんにハチミツは良いのですが、家族に乳児がいる場合は一緒に舐めないよう、注意しましょう。

 

<まとめ>

・鼻汁が多ければその原因に「ライノウイルス」の可能性あり。

・このウイルスには今のところ、迅速検査はない。

・鼻汁には「血管運動性鼻炎」も原因のひとつ。

・鼻汁には対症療法が行われる。

・鼻汁の原因の鑑別に「鼻汁中好酸球検査」がある。

・咳止めとしてハチミツも試してよいが、1歳未満の児には与えない。

以上です。よろしくお願いします。

 

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