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小児科は全身を診る科です。その中で「口腔内所見」といい、口の中の診察で、病名がはっきりすることがあります。
子供は口の中を見(診)られるのが大嫌いです。普通、舌圧子という平たい棒で舌を抑えながらライトで喉(のど)の上下左右と奥まで診ます。子供は嫌がって、激しく泣き、体をそらし、手で医者の手を払い除けようとします。必死です。でも診察に慣れているのか、素直に大人しく、自分から大きく口を開けてくれる子供もいます。
医師国家試験でも小児の診察手順を問う問題が出ます。診察には聴診や触診などがありますが、一番最後は「咽頭所見」の診察です。前述のように、喉を見る場合は子供は嫌がって大泣きし、激しく動くこともあります。先に喉を見てこういう状態になれば、聴診も正確にできません。医師も子供が嫌がるなか、一瞬で喉全体を見るようにしています。
1)麻疹(はしか)
麻疹診断の決め手は「コプリック斑”Koplik’s spots”」と言われる頬(ほほ)粘膜にみられる白い斑点です(コプリクが正しい発音ですが日本ではコプリックと言う医師がほとんどです)。近年は麻疹が減り、この「白い斑点」を見たことがない医師が増えています。
まず、一般的な麻疹の経過を示します。
上の図のように、麻疹に感染すると、最初は発熱と風邪の症状が出ます(カタル期)。この時点で病院に行くと、「咽頭炎」と診断される場合が多いのです。3日目くらいで、一旦解熱し、家族も安心するのですが、再度発熱します。家族は再度病院へ。すると、発熱初日にはなかった頬粘膜のコプリック斑が3,4日目には確認でき、「麻疹」の診断が可能です。
そのコプリック斑が下の写真です。白いツブツブが見えます。
麻疹の流行がないか、また、ワクチン接種歴の確認も重要です。
2)川崎病
川崎病は未だに原因が不明です。発熱、発疹(BCG接種部位の発赤も含む)、目の充血、頸部リンパ節の腫大、手や指の浮腫、そして口唇の発赤や舌の発赤・腫大(いちご舌)が特徴です。
特に「いちご舌」が特徴的です。
3)溶連菌感染症
A群βという種類の溶連菌が扁桃炎を起こします。発熱と喉の痛みを訴えます。
扁桃腺に白い膿がべっとりと付着し、喉の上には細かい点状出血、舌も川崎病のような「いちご舌」がみられます。
4)手足口病
夏風邪の一つで、保育園児から小学生まで夏に流行ります。コクサッキーウイルスが原因です。
病名のように発熱や手足口に発疹。臀部にも発疹がでる場合があります。
口内炎の痛みが強くて水分も採れない場合は心配ですが、解熱し、食事も普通に食べれれば登園、登校は可能です。
5)ヘルパンギーナ
これも夏風邪で、手足口病とコクサッキーウイルスの別タイプの感染症です。
熱と咽頭痛があり、発疹は手足には出ず、喉の「のどちんこ」の周囲に数個、粘膜疹が見られます。解熱し、食事が接種可能なら登園・登校は可能です。
6)プール熱(咽頭結膜熱)
アデノウイルスの感染症です。一般名のようにプールの水を介して感染しやすいのです。
正式名の咽頭結膜熱のように、発熱があり、咽頭は赤く腫れ、扁桃腺に膿(白苔)が付く場合もあります。白目や瞼(まぶた)粘膜の充血が強く、痛みます。
下の写真は左が扁桃腺に付着した白苔、右が眼充血です。
プール熱は喉よりも、目の症状が目立ちます。感染力が強いので、しばらく園や学校のお休みが必要です。
☆以上のように、「喉の診察」は診断上、重要なものです。子供にとっては嫌なものですが、すばやく、一回で済ませるよう、心掛けています。