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毎年の事ですが、秋は1年の中でも咳の患者さんが増えます。
この2,3年はコロナで親御さんはもちろん、園や学校でも咳や鼻汁に過敏になっています。
10年、20年前、気管支喘息の重症発作が多かった頃は大学病院の当直医をすると夕方から朝まで小児の喘息発作患者が多く受診しました。
一晩で何度も喘息発作で受診する子どもたち、また救急車で重症発作で搬送され、すでに意識もなく緊急入院になる人もいました。入院患者の
半数が喘息患者が占めるという時代もありました。
今は小児気管支喘息発作の入院数はかなり減り、喘息患者さんであっても夜間に発作を起こし、救急病院に駆けつける人はまれになりました。
気管支喘息の重症者が少なくなったのは良いのですが、ここで気管支喘息を簡単に振り返りたいと思います。
気管支喘息は検査で診断するのではなく、症状が診断の基本です。発作時は気管支が狭くなるので、息を吐く時(呼気時)にヒューヒューやゼーゼー(喘鳴といいます)
という音がします。
「音がします」というのは聴診器を使うまでもなく、近くにいる人にも聴こえるほどはっきりした音です。同時に肩で息をしたり、体全体で息をするような呼吸困難があります。
重症になれば苦しくて会話もできなくなります。
こういう状態(いわゆる”発作”)を1度だけではなく、複数回繰り返した経験があれば、気管支喘息の診断に近づきます。そのほか、患者さんや家族のアレルギー歴、天候や季節(特に秋)との関連が強いのです。意外に、喘息発作は親子や兄弟関係、園や学校生活などのストレスとも関連があり、色々奥深いのです。
喘息発作も咳が出ますが、これは発作時には痰が気管支内に多く分泌される状態になっており、痰を外に出そうとする防御反応でもあります。
よく、咳がひどいと喘息ではないか、と心配されますが、先ほど述べたように、喘息の発作であれば気管支が狭くなった音(ヒューヒューやゼーゼーという”喘鳴”)が聴こえますので、
これが無いと咳だけでは喘息発作とは断定できません。
ひどい咳が毎日ある。しかし、喘鳴はない。こういう患者さんが秋には多いのですが、喘息と診断しなくても気道(空気の通り道)の過敏性があり、気温や気圧の変化(台風接近など)で
咳が増えるお子さんが少なくありません。
そして、9月は新学期の疲れ(体や気持ち)も咳の原因の一つに考える必要があるかも知れません。
子どもさん本人の「苦しい」という表現がある場合、指先で酸素濃度を測定することが多いのですが、その数字が98-100%で、聴診でも異常な音がなければ、肺炎や
気管支炎はもちろん、喘息発作も考えにくく、親御さんも安心されます。ただ、夜間の咳の場合、乳幼児の場合は「後鼻漏」といって、鼻汁がのどに落ち、咳の原因になっている場合があります。秋など季節の変わり目は喘息でなくても痰は出やすく、後鼻漏もあればさらに咳は持続してしまいます。睡眠に影響がある場合は受診をお勧めします。
小児への咳への薬はいわゆる対症療法がメインです。痰を滑らかにして切れやすいようにする去痰剤が主になりますが、強い咳止め薬は痰を外に出そうとする咳という防御反応を抑制してしま
うので、特に乳幼児には強い咳止めは処方しません。
以上、咳や喘息について記載しましたが、咳といっても薬で明日から咳一つなし、というのは意外に難しい場合も多いのです。園にお子さんを預けている間、咳の状態はどうだったか、
園の職員さんに訊いてみるのも医師にとっていい情報になるかも知れません。