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新生児科


小児科にも色んな専門分野があります。循環器(心臓疾患)、感染症、呼吸器・アレルギー、内分泌、血液、腎臓、神経、腫瘍など。そして、新生児科です。

僕は新生児の専門ではありませんが、数カ月だけ新生児病棟で研修をしました。新生児科を専門とし、日常働く先生には本当に頭が下がりますし、尊敬します。

新生児科はいわゆる未熟児を診る科です。未熟児は正式には「低出生体重児」といい、体重2500グラム未満で生まれた赤ちゃんです。さらに細かく分けると、表のように分類されます。あくまで生まれた時の体重による分類です。

出生時体重 分 類
2500g未満 低出生体重児
1500g未満 極低出生体重児
1000g未満 超低出生体重児

さらに、在胎週数による分類もあります。

在胎週数 分 類
37週~42週未満 正期産児
37週未満 早産児
34週から37週未満 後期早産児

新生児科の医師にとっては、産まれた赤ちゃんの「出生時体重」と「在胎週数」という情報が重要になります。

普通、在胎週数が短いほど、生まれた時の体重も小さくなりますが、出生時体重が在胎週数による基準と一致しない場合もあります。子宮内の赤ちゃんに発育不全があれば在胎週数による予想体重よりも小さく生まれてきます。

小さく生まれると、肺や心臓、目などあらゆる器官が未熟のままです。細菌への抵抗力も未熟です。肺、心臓の未熟さで低酸素脳症となり、脳性麻痺となったり、視力障害、知的障害となる場合もあります。

新生児科の先生たちはこういう未熟で無防備の状態で外界に出た赤ちゃんを、いわばお母さんの胎内の代わりになって、できるだけ、合併症や後遺症を少なく育てる努力をしているのです。

小さく生まれた赤ちゃんは自分でミルクを飲むことができず、点滴が命綱です。体重が数百グラムしかない赤ちゃんの細い血管に、点滴の針を入れていくのは神業です。また、肺が未熟なので人工呼吸器を装着する場合、気管支にチューブを入れるのですが、ほとんどの処置や看護師さんによるケアは保育器内の温度が下がらないように小さな窓から手を入れて行うのです。

写真は以前、BSフジで放映されたThe Truthから。

たった数か月しか新生児病棟にいなかった僕には新生児科の大変さを述べる資格などないのですが、小さい赤ちゃんの輸液(点滴)管理は大変でした。1日に何回も採血し、電解質や血糖、酸素濃度などを測定し(1回の採血も難しいのです)、結果をみながらその都度、点滴の内容を変更したり、人工呼吸器の設定を変えます。また、新たな異常が見つかれば治療も増えていきます。

毎日、24時間、目を離せないのが、新生児科の医師、看護師、スタッフの大変さなのです。

その分、未熟で生まれた小さな赤ちゃんが、数か月、或いは何年もの間入院し、退院可能となった日はひょっとしたら、赤ちゃんの両親以上に嬉しいかも知れません。

日本の新生児医療は大変優秀なのです。下のグラフのように、先進国の中でも、日本の乳児死亡はダントツで低いのです。これは、いかに日本の新生児医療が群を抜いて優秀なのかを物語っています。

なぜ、日本は乳児死亡が少ないのか。僕は日本人の「器用さ」が一因にあるのではないかと思っています。あの数百グラムの赤ちゃんの糸よりも細い血管に点滴を入れたり、採血をする。しかも保育器内に窓から手を入れてという両手の自由が効かない状況での作業です。僕が研修で回った時は、体が大きく、手も大きい医師が何人かいたのですが、あっという間に完璧にやり遂げる神業には唖然としました。

世の中、すべての赤ちゃんが正期産で体重も充分あって産まれてくればいいのですが、万一、小さく生まれても、日本には優秀な新生児科医師がいるのです。

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