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麻疹(はしか)は“あなどれない”


<最初に>

3月に入ってから、麻疹(はしか)が都内、しかも足立区では小児の感染が確認されました。

まず、最初に以下の内容をご確認の上、詳しい内容を読み進めていただければ、と思います。成人の方の麻疹抗体価検査は当クリニックで受け付けていますが、下記の様に、お願いいたします。

<麻疹抗体価の判定>

当クリニックでは判定に麻疹IgG抗体をEIAという方法で検査会社に依頼しています(結果が分るまで1週間かかります)。

下の表をご覧ください。EIA法では検査上、2.0未満が陰性です。気を付けたいのは、陰性ではないものの16.0以下では「基準を満たさない」という判定です。

その下のチャート図にあるように、「抗体価陽性(基準を満たさない)」に該当すれば、ワクチン1回接種が推奨されています。16.0以上では「基準を満たす」

となり、免疫が充分あるとの判定でワクチン接種の必要はありません(心配な場合は4-5年後にさらに抗体価検査)。


<予防接種歴と抗体価結果によるチャート>

<麻疹(はしか)の症状>

麻疹はワクチンで予防するしか手段がありませんが、麻疹に感染すればどういう症状が出るのでしょうか。

麻疹ウイルス感染後、10-12日程度の潜伏期の後、発熱とカタル症状と言われる感冒症状、目やにや眼充血で発症します。

医師にとって麻疹の診断上、最大のポイントは「コプリック斑」です。これは、ほっぺの内側の粘膜にみられる白い斑点です。コプリック斑=麻疹という診断です。

 

ただし、医師泣かせなのは、この白い斑点は熱が出て3,4日目頃になってやっと出ます。

つまり、熱の初日から2,3日までは見られないのです。発熱早期ではまだコプリック斑がなく、医者も麻疹だとは気が付きません。「風邪による発熱」という診断になってしまいます。そして、4日目くらいに一旦解熱します。解熱して家族も安心。。しかし、翌日には再度、体温が上昇します(2峰性発熱)。そこで、家族はさらに心配、再度受診します。そこでようやく、医師はこのコプリック斑を見て、「麻疹」だと診断できます。つまり、あとから診た医師が名医なんて言われます。

コプリック斑出現とほぼ同時に全身に発疹が出現します。この発疹の経過も特徴的で、最初はパラパラした紅い発疹、次にパラパラがつながってきます(癒合)。最後には茶褐色となり、色素沈着します。

<麻疹は非常に感染力が強い>

近年、ワクチン接種が普及し、麻疹感染者は減り、返って麻疹の診察、診断を経験した医者も少なくなってきました。新型コロナ禍が明け、人々の海外渡航も増えました。この結果、今回の日本での麻疹発生が起きたのかも知れません。麻疹ウイルスは感染力が非常に強く、すれ違っただけで感染してしまいます。

僕自身、昔、勤務した病院で麻疹大流行があり、多くの小児患者が発熱時にぐったりし、辛そうな顔が今でも思い出されます。また、麻疹に感染後、10数年で発症する亜急性硬化性全脳炎(SSPE)という難病患者も受け持ちました。麻疹は決してあなどれない感染症です。人への感染を防ぐ意味でも、まずお子さんは2回のMRワクチン定期接種を受けましょう。

<麻疹ワクチンの歴史と年代別対応>

麻疹ワクチンの接種スケジュールは下記の様に変遷がありました。表のように、生まれた年月日によって「予防接種を接種していない可能性がある世代」、「1回のみの世代」があるのです。

小児期に2回接種していれば、まず、慌てることはありません。

それでは、未接種の可能性がある世代、1回しかワクチン接種していない世代の麻疹対策はどうでしょうか。

そういう世代は昔の事でもあり、ワクチン接種歴や感染歴が不明な方が多い世代です。しかし、その世代の子供時代は、麻疹は良くも悪くも「当たり前の感染症」でした。記憶になくても乳幼児期から小学校時代にすでに麻疹に感染した方が多く、すでに免疫を獲得している方がいます。もし、成人の方で、麻疹免疫の有無が心配な方は麻疹抗体価検査をお勧めします(自費になります)。

子供への麻疹ワクチンは、現在は2000年4月2日以降、定期接種で1歳児と小学校就学前の2回、MR(麻疹・風疹混合)ワクチンを接種します。

今回の麻疹感染者報道で、当クリニックにも麻疹抗体価検査希望の成人の方がたくさん来院されています。もし、最初の表のように、抗体価が陰性や陽性でも充分な抗体がない場合はMRワクチン接種が推奨すべき対応ですが、全国的にMRワクチンが不足気味であることから、現状では小児の定期接種を優先しています。成人へのMRワクチンの供給に余裕ができましたら、当クリニックHPにてお知らせしますので、お待ちください。ワクチン接種が可能になる前に抗体価検査を先にやっておくのも良いかと思います。

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