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インフルエンザに2度感染するのか?


<2024年初めに>

2024年になりました。能登半島地震や羽田空港での事故もあり、被災地、当事者の皆さんには大変な日々になっています。時間はかかるでしょうけれども心身共に立ち直るよう、クリニックスタッフ一同、応援しております。

<インフルエンザ流行>

東京都を含め、インフルエンザが昨年秋から流行しています。下図の様に、赤の線が2023-2024のインフルエンザです。2023年51週の時点(12月24日の週)で定点あたり18.08人とありますが、これは一つの医療機関に1週間で平均18.08人インフルエンザがいた、という事です。1つのクリニックや病院で1日で約3人陽性者がいたのです。他の年と比較すると、今シーズンは流行の開始が早く、9月から増加しつつありました。他の感染症、RSウイルスも含め、新型コロナの影響なのか、例年の流行パターンから変わったのかも知れません。

 

<インフルエンザウイルスの種類>

インフルエンザウイルスには「親戚」がたくさんいます。私の姓は松田ですが、私の兄弟、子供、両親、父方祖父母も同じ松田姓です。どの家族も血がつながっている家族や親戚は増えていきます。このように同じインフルエンザAも家系図のようにどんどん系統が増えていきます。同じ松田姓でも他人から見れば、顔や容姿があまり似ておらず、親族だとは気が付かずに全くの別人だと思ってしまうこともあるでしょう。つまり免疫がない状態と同じです。

さらにインフルエンザにはB型も流行します。当クリニックでもB型陽性者がいます。同じ姓でもまた系統が違う型です。子供が結婚して実家を出て独立し、家を別に生活しても同じ松田姓を名乗るようなものです。同じ姓でも家が違うのです。やや強引な例えですが、実家に手紙を出しても、住所が違うその子供の家には届かない。実際インフルエンザウイルスにはAもBも多くの種類(株)があるのです。

<インフルエンザワクチンの内容>

昨秋から2023-2024シーズン用のインフルエンザワクチンを接種された人もいらっしゃるかと思います。毎年、WHOがそのシーズンに流行する株を予想し、日本の厚労省はそれを参考に、実際のワクチン内容を決めます。今シーズンは以下の様になっています。

ご覧のように、近年はA型、B型が2種類ずつワクチンに入っています。A型のH1N1(昔はソ連型と言われていました)は前シーズンから変更、H3N2(香港型)は前シーズンと同じです。H1N1の変更は同じ松田姓でも前シーズンは兄、今シーズンは弟というイメージです。

今回のブログの題でもある、何故、インフルエンザに2度かかるのか?それは同じ松田姓の人に会って、顔を覚えていても初対面の人があまり似ておらず、その人が松田姓とは気が付かないのと似ています。A型に感染しても、B型に感染する場合があります。同じ松田姓でも従妹などの親戚が複数いる、というイメージです。このように、1つのシーズンにA型を2回、B型にも感染した、という人がいてもおかしくないのです。

<実はインフルエンザにはC型もある>

A型、B型のインフルエンザはよく知られていますが、実はC型もあるのです。C型があまり話題にならないのは、6歳ぐらいまでに感染することが多く、その後は免疫が終生持続するので2回以上は感染しない、発熱と鼻汁があるが、AやBほど重症感は無い、などです。そういうこともあってか、検査キットもC型の判定が可能なものはないのです。いわば、検査の必要がないのでしょうね。

<では、インフルエンザワクチン接種の意味は?>

さて、「せっかくインフルエンザワクチンを接種したのに、感染した」という人もいます。これは①接種しても免疫が充分得られなかった②そのシーズンのワクチンの予想株が合わなかった、などが考えられますが、接種しておけば、たとえ感染しても重症化しない、とも言われています。

海外の論文によると、インフルエンザワクチン接種を受ければ、ICU(重症患者が入る集中治療室)への入院が26%減少した、インフルエンザでの死亡が31%減少した、という報告があります。私が昔、在籍した病院では冬期に数人のインフルエンザ脳症が数日の間に連続して入院した経験がありますが、全員、インフルエンザワクチンを接種していませんでした。たとえ感染してもワクチンを接種しておけば脳症にまでならなかったのではないか、とその時は痛感しました。

インフルエンザワクチンによる発症抑制や重症化抑制についての研究報告は日本を含め海外にも多数ありますが、総合的にはおおむね、下図のように、発症リスクは約60%軽減、重症化リスクは約50%軽減するようです。

 

また、自分が感染すれば他人にも感染させる可能性が強くなります。コロナが5類になって、やや感染症に対する緊張感が緩んだかも知れませんが、インフルエンザも発症後の翌日から最低5日間は園や学校は休む必要があり、保護者の負担など社会的な影響も大きいものです。

<今回のまとめ>

  • インフルエンザには主にA、B、Cの型があり、実際にはA、B型の感染が主。
  • 複数回感染する可能性がある。
  • インフルエンザワクチンは感染予防、他人に感染させない、重症化抑制の期待ができる。

以上、今年も当クリニックをよろしくお願いいたします。小児科 松田

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