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在籍していた大学医学部が川崎市にあったため、川崎市内の喘息児を対象とする「喘息児サマーキャンプ」の統括医師を長年つとめていました。
かつては、八ヶ岳にある川崎市所有の施設で4泊5日。小学校4-6年生の喘息児150名を募集しました。大人のスタッフは医師3人の他、看護師、保健師の医療班、市の職員、指導員、子供たちの面倒をみるボーイスカウト、ガールスカウトに所属するリーダーさん、学生ボランティアを含めて約50人、総勢200人の大所帯でした。バスを何台も連ねて川崎市から八ヶ岳に向かいます。親御さんの付き添いは無く、親元を離れての外泊は初体験という子供たちも多くいました。
毎年、夏休みに実施されますが、その数か月前から川崎市のスタッフ、指導員、医療班、リーダーさんが集まり、何度も会議を開きます。
医療班では子供たちの使っている薬の確認、喘息以外の病気の有無、現在の健康状態の把握、親御さんの希望(集団生活になじめるかの不安、おねしょの心配や軟膏の塗布など)などをチェックします。
実施前には参加者全員に「事前健診」を行い、子供たちの健康状態を把握します。親御さんの中にはキャンプをきっかけに普段引っ込み思案な性格を少しでも治したい、という希望もあったりします。
現地では喘息に対応した薬剤はもちろん、発熱や胃腸炎、ケガなどあらゆる症状に対応が可能なように、多くの薬品・物品を用意する必要があり、まるで病院そのものが八ヶ岳に移動するようでした。実際は喘息発作よりも腹痛や頭痛、打撲やケガの方がずっと多かったのです。
子供たちは毎朝のラジオ体操、喘息体操も含め、登山、スポーツ大会、野外炊飯、キャンプファイヤー、そして喘息の勉強もあります。班ごとに喘息についてまとめて発表。こうやって医師顔負けの喘息知識を得るのです。事前の会議ではこういうプログラムを綿密に考えるのです。
キャンプファイヤー
喘息を勉強した結果を発表
期間中、ホームシックになり、”脱走”を試みる子供やどうしても家に電話したいと公衆電話の前から動かない子供もいました。子離れできていないのか、川崎市を出発する時、子供を心配するあまり、お母さんが体調不良で倒れてしまうというケースもありました。
日程を消化して川崎市に戻るバス内では川崎市のスタッフは4泊5日、子供達の相手や対応で不眠不休状態が続き、疲れでクタクタです。しかし、子供たちの殆どが、「あと1,2日やりたい」と何故か元気いっぱいなのです。学校や学年も違う子供達は4,5日で仲良くなり、最終日には別れ難くなるのでしょう。最後の夜にお互いの電話番号や住所を交換していたのが印象的でした。
2009年、キャンプ参加のスタッフに新型インフルエンザ感染者が出たことをきっかけに、また最近の小児喘息治療・管理が良くなり重症患者が減った事もあり、現在は参加人数を減らし、場所も川崎市内という近場での実施となりました。実施日数も1泊に減らしています。
このように、以前の大規模キャンプからかなり規模が縮小され、寂しい気持ちです。しかし、これは喘息が軽症化し、長期入院患者や重症発作が少なくなったためで、喜ばしい話でもあります。
軽症化した理由の一つに学会から「小児気管支喘息治療・管理ガイドライン」が2000年に発行され、全国の医師がこのガイドラインに従って、統一された方針でのしっかりした治療が可能になったことです。さらに患者さんの喘息についての理解が浸透したこともあります。ただし、喘息はしっかりと長期的に経過を観察しなければならない病気です。是非、かかりつけ医でしっかりとみてもらい、薬の継続、中止などは家庭では判断せず、医師の指示に従いましょう。