◎はじめに
お子様の肌が赤くカサカサしていたり、夜中に痒くて眠れそうになかったりする姿を見るのは、親御様にとって本当につらいものです。「ずっとステロイドを塗り続けて大丈夫?」「食べ物が原因なの?」といった不安を抱え、一人で悩まれている方も少なくありません。
アトピー性皮膚炎は、正しい知識を持ち、根気強くケアを続けることで、症状をコントロールし、健やかな肌を取り戻すことができる病気です。五反野皮ふ・こどもクリニックでは、皮膚科と小児科の両面から、お子様の成長に合わせた最適な治療を提案いたします。
◎「アトピー性皮膚炎とは?」
アトピー性皮膚炎とは、増悪と寛解(良くなったり悪くなったりすること)を繰り返す、かゆみのある湿疹を主とする疾患です。
もともと「アトピー素因」と呼ばれるアレルギーを起こしやすい体質を持っていることや、肌の「バリア機能」が弱まっていることが背景にあります。単なる肌荒れではなく、慢性的な炎症が起きている状態であると理解することが、治療の第一歩となります。
◎「症状の特徴」
小児のアトピー性皮膚炎では、年齢ごとに症状が現れやすい部位が異なります。
- 乳児期: 頬や額など顔面に始まり、次第に体や手足に広がります。ジクジクとした湿疹が出やすいのが特徴です。
- 幼少期: 首の回り、肘の内側、膝の裏側など、関節の屈曲部にカサカサした湿疹が目立つようになります。
- かゆみの連鎖: かゆくて掻いてしまうことでバリア機能がさらに壊れ、そこから刺激が入ってさらに痒くなるという「かゆみの悪循環」に陥りやすいのが特徴です。
◎「アトピー性皮膚炎が起こる原因」
原因は一つではなく、複数の要因が重なり合って発症します。
- 皮膚のバリア機能の低下: セラミドなどの水分保持成分が不足し、外からの刺激(乾燥、ダニ、花粉など)でかゆみを生じやすくなります。
- アレルギー炎症: 免疫システムが外からの刺激に対して過剰に反応し、皮膚に炎症を起こします。
- 環境要因: 汗、摩擦、ハウスダスト、ペットの毛、あるいは心理的なストレスも悪化因子となることがあります。
◎「アトピー性皮膚炎の種類」
重症度や経過によって、以下のように分類されます。
- 軽症: 面積にかかわらず、軽度の赤みや乾燥のみがみられる状態。
- 中等症: 強い赤みが狭い範囲に見られる状態。
- 重症~最重症: 強い赤みや掻き壊しが広い範囲に見られる状態。皮膚が厚く硬くなる「苔癬化(たいせんか)」も伴います。
また、季節によっても「夏場は汗で悪化するタイプ」「冬場は乾燥で粉を吹くタイプ」などが見られます。
◎「アトピー性皮膚炎の発生部位ごとの特徴」
- 顔・首: 皮膚が薄く、薬の吸収が良いため、適切な強さの薬を選ぶ必要があります。
- 関節部: 汗が溜まりやすく、擦れやすいため、炎症が長引きやすい場所です。
- 頭皮: フケのようなカサカサが出やすく、塗り薬の種類(ローションタイプなど)を工夫します。
◎「アトピー性皮膚炎が引き起こす主な合併症」
アトピー性皮膚炎は、他のアレルギー疾患と深い関わりがあります。
- 食物アレルギー: 荒れた肌からアレルゲンが侵入することで発症するケース(経皮感作)があるため、早期のスキンケアが予防に繋がります。
- 気管支喘息、アレルギー性鼻炎: 荒れた肌からアレルゲンが侵入することで将来的に喘息やアレルギー性鼻炎を発症することが知られています。
- 感染症: とびひ(伝染性膿痂疹)や、カポジ水痘様発疹症などのウイルス感染を合併しやすくなります。
他にも、睡眠障害による発達への影響、学習効率の低下などを引き起こすことが知られています。
◎「アトピーを和らげるために自分でできる対処法は?(スキンケアの極意)」
ご家庭での日々のケアが、薬と同じくらい重要です。
- 「洗う」: 低刺激の石鹸をよく泡立て、手で優しく洗います。ゴシゴシ擦るのは厳禁です。
- 「流す」: 石鹸成分が残らないよう、ぬるま湯でしっかりすすぎます。
- 「拭く」: タオルを押し当てるようにして水分を吸い取ります。
- 「塗る」: お風呂上がり5分以内に保湿剤(症状に合わせて外用薬も)を塗ります。ティッシュが肌に張り付くくらいたっぷり塗るのがコツです。
◎「受診をした方が良い場合は?」
以下のような場合は、早めに当院へご相談ください。
- 市販の保湿剤だけでは赤みが引かない。
- かゆみで夜中に何度も目が覚める、または掻き壊して血が出ている。
- ジュクジュクして汁が出ている(細菌感染の疑い)。
- 以前処方された薬を塗っているが、一向に良くならない。
◎「どのような検査が必要で、何を調べる?」
診断は主に視診と経過で行いますが、必要に応じて以下の検査を行います。
- 血液検査(TARC): 直近の「皮膚の炎症の勢い」を数値化できる検査です。見た目がきれいになっても、数値が高い場合は治療を継続する必要があります。
- 特異的IgE抗体: 治療がうまくいかない場合はダニ、カビ、花粉、食物など、何が刺激になっているかの目安を調べます。
◎「どのような診断と治療が行われるの?」
当院では「プロアクティブ療法」という考え方を大切にしています。
- 急性期の治療: ステロイド外用薬をしっかり使い、まずは一気に炎症を抑えます。
- 維持期の治療: 見た目がきれいになった後も、ステロイド外用薬や免疫抑制薬を塗り続けることで、再発を防ぎます。
- 最新の治療: 従来の治療で改善が乏しい場合、デュピクセント(注射薬)やミチーガ(注射)といった最新の選択肢も、お子様の年齢に応じて検討します。
◎「どのような診察が行われるの?」
診察室では、以下のステップでお子様を診させていただきます。
- 全身の確認: 一部分だけでなく、頭から足の先まで全身の肌の状態を確認します。
- 塗り方の説明: 薬の種類だけでなく、「どこに」「どれくらいの量を」「いつまで」塗るのか、お伝えします。
- 生活環境のヒアリング: ペットの有無、お風呂の入り方など、悪化因子を一緒に探ります。
◎最後に…
アトピー性皮膚炎の治療のゴールは、単に「赤みを消すこと」だけではありません。かゆみを忘れてぐっすり眠り、お友達と思いっきり遊び、お子様が笑顔で毎日を過ごせるようにすることです。
「ステロイドを使いたくない」というお気持ちも、まずはそのままお聞かせください。医師として、メリットとデメリットを丁寧にご説明し、納得のいく治療法を一緒に見つけていきましょう。足立区五反野の地で、お子様の肌の主治医として長く寄り添っていければ幸いです。