◎はじめに
赤ちゃんの顔や体にポツポツと現れる「乳児湿疹」。「きれいでモチモチだったはずの肌が急に荒れてしまった」「私の食べ物のせい?」と、心配されるお母様・お父様は非常に多いです。
乳児湿疹は赤ちゃんの成長過程で多くの親子が経験するものですが、適切なスキンケアと治療を行うことで、将来のアレルギー疾患を予防できる可能性も秘めています。五反野皮ふ・こどもクリニックでは、皮膚科の専門知識と小児科の全身管理の視点から、赤ちゃんの健やかな肌作りをサポートいたします。
◎「乳児湿疹とは?」
乳児湿疹とは、生後間もない時期から1歳頃までの乳児に見られる、湿疹の総称です。
特定の病名を指すのではなく、乳児脂漏性湿疹、新生児ニキビ、あせも、あるいは初期のアトピー性皮膚炎などを含めた「赤ちゃんに起きる湿疹」をまとめてこう呼びます。赤ちゃんの肌は非常に薄く、バリア機能が未熟なため、少しの刺激でもトラブルが起きやすいのが特徴です。
◎「症状の特徴」
時期や原因によって現れ方が異なります。
- 生後1~2ヶ月頃まで: 頬や額に赤いポツポツ(新生児ニキビ)が出たり、頭や眉毛に黄色いかさぶた(脂漏性湿疹)がついたりします。
- 生後2〜3ヶ月以降: 皮脂の分泌が急激に減り、肌が乾燥してカサカサしてきます。これを放置すると、赤みやかゆみを伴う湿疹へと進行します。
- かゆみのサイン: 赤ちゃんが顔をシーツに擦り付けたり、自分の手で顔を引っ掻いたりする動作が見られたら、かゆみを感じているサインです。
◎「乳児湿疹が起こる原因」
赤ちゃんの肌特有のメカニズムが関係しています。
- 皮脂分泌のアンバランス: 生後すぐは母体からのホルモンの影響で皮脂が過剰に出ますが、数ヶ月経つと一転して乾燥しやすくなります。
- 未熟なバリア機能: 赤ちゃんの皮膚は大人の約半分の薄さしかなく、水分を蓄える力も弱いため、外部の刺激(よだれ、汗、衣類の摩擦)に非常に敏感です。
- 外部からの刺激: 食べこぼし、涙、汗などが長時間肌に付着することで炎症を引き起こします。
◎「乳児湿疹の種類」
主に以下のものが含まれます。
- 乳児脂漏性(しろうせい)湿疹: 頭や眉毛に黄色い脂っぽいかさぶたやフケが出るもの。
- 新生児ニキビ: 生後1週間〜1ヶ月頃に見られる、大人のニキビに似た赤いブツブツ。
- 皮脂欠乏性湿疹: 生後3ヶ月以降の乾燥が原因で起こるカサカサ。
- アトピー性皮膚炎: 湿疹が長く続き、強いかゆみや独特の分布が見られるもの。
◎「乳児湿疹の発生部位ごとの特徴」
- 頭・顔: 最初に出やすい場所です。皮脂の分泌が多い時期は頭や顔面に、乾燥する時期は頬に強く出ます。
- 首のしわ・わきの下: 汗やミルクの飲みこぼしが溜まりやすく、蒸れて赤くなりやすい部位です。
- 耳の周り: 湿疹がひどくなると、耳の付け根が切れたり(耳切れ)、ジュクジュクしたりすることがあります。
◎「乳児湿疹が引き起こす疾患」
- 食物アレルギー(経皮感作):湿疹による皮膚のバリア機能障害があると、荒れた肌から食べ物の成分が入り込むことで食物アレルギーを発症します。つまり、湿疹をしっかり治すことがアレルギー予防に繋がります。
- とびひ(伝染性膿痂疹): 湿疹を掻き壊した傷から細菌が入ると、とびひに発展してしまいます。
◎「乳児湿疹を和らげるために自分でできる対処法は?」
毎日の正しいスキンケアが治療の基本(ベース)になります。
- 「清潔」に洗う: 石鹸をよく泡立て、素手でなでるように洗います。特にかさぶたがある場所は、入浴前にオイルなどでふやかしてから洗うと効果的です。
- 「しっかり」流す: 石鹸成分が肌に残らないよう、ぬるま湯で丁寧にすすぎます。
- 「たっぷり」保湿: お風呂上がりはもちろん、よだれを拭いた後やオムツ替えの際など、1日何度でも保湿剤を塗って、肌のバリアを補強してあげましょう。
◎「受診をした方が良い場合は?」
- スキンケアを頑張っているのに、赤みが引かない、または広がっているとき。
- 赤ちゃんがかゆがって不機嫌だったり、夜泣きがひどかったりするとき。
- 湿疹から汁(浸出液)が出ていたり、黄色いかさぶたがひどくなったりしたとき。
- 湿疹の範囲が全身に及んでいるとき。
◎「どのような検査が必要で、何を調べる?」
- 視診: 湿疹の状態、分布、かゆみの程度を確認します。
- アレルギー検査(必要に応じて): 湿疹が非常に重症で、なかなか治らない場合には、食物アレルギーの可能性を考えて血液検査を検討することもありますが、乳児期早期には慎重に判断します。
◎「どのような診断と治療が行われるの?」
- ステロイド外用薬: 炎症(赤み)がある場所には、炎症を抑えるために適切な強さのステロイド薬を使用します。「赤ちゃんにステロイド?」と不安になる方も多いですが、短期間でしっかり治すことが、結果として薬の使用量を減らすことに繋がります。湿疹を繰り返す場合は、アトピー性皮膚炎としての治療を行います。
- 保湿剤(ヘパリン類似物質やワセリン): 皮膚のバリア機能を整えるために処方します。
◎「どのような診察が行われるの?」
- 全身チェック: 皮膚の状態だけでなく、成長(体重増加など)や母乳・ミルクの摂取状況も伺います。
- スキンケアの指導: 実際に薬や保湿剤をどのくらいの量、どう塗るのが効果的か、具体的にお伝えします。
- 環境アドバイス: 入浴の仕方、衣類の素材など、生活環境のアドバイスも行います。
◎「最後に…」
乳児湿疹は、赤ちゃんが外の世界の刺激に一生懸命適応しようとしている証拠でもあります。多くの場合は、正しいケアと適切な治療で、ツルツルのきれいな肌を取り戻すことができます。
また、この時期の肌をきれいに保つことは、将来のアレルギー疾患を避けるための「最高のアレルギー予防」でもあります。五反野皮ふ・こどもクリニックは、赤ちゃんの初めての肌トラブルに寄り添い、お母様・お父様の不安を安心に変える場所でありたいと考えています。些細なことでも、どうぞお気軽にご相談ください。