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乳幼児の異物誤飲


昔、学会で子供の誤飲についての統計をまとめたものを発表しました。翌日、新聞にこの学会での発表内容が掲載されたのですが、これは「小児の思わぬ事故を防ごう」という意図が取り上げられたものでした。

大学病院など救急を扱う病院では小児の異物誤飲が救急車で搬送されたり、電話での相談が多くあります。どの家族も自分のお子さんの病気を心配するのですが、意外に子供さんの「事故」については残念ながら注意が足りないなと思うことがあります。

「異物誤飲」は本来、口に入れない物を飲み込んでしまうことです。異物誤飲には異物を飲み込んだ後、その異物が食道から胃や腸に入っていく「消化管異物」と呼吸をする際に吸気や呼気が通る気道(ノドや気管支など)に異物が入ってしまう「気道異物」があります。ピーナッツなどは元々食べるものですが、食物が消化管ではなく気道に入った場合は気道異物といいます。

小児は生後8-9か月頃から「這い這い」ができるようになり、自分の興味がある物を目指して移動するようになります。学会発表で調べた統計でも生後9か月以降に異物誤飲が急に増えます。

異物誤飲が多い時間帯は、朝も夜も7-9時が多いのです。午前は家族が出勤や登校で忙しく、小さい子供に目が行き届かないのでしょう。意外だったのが、夜の7-9時にも多かったことです。夕食事、団らんで家族が集まる時間帯にもかかわらず頻度が多いのは不思議です。テレビや会話などで小さい子供に注意が向かないのでしょうか。。

異物の種類ですが、昔はタバコが非常に多く、ダントツの1位でした。かつては喫煙者が今よりも多く、“ちゃぶ台”のような高さが低くて子供でも手が届く場所にタバコの箱や灰皿が置かれていました。子供にとっては大人がタバコを口にするのを普段から見ていると、「口に入れるもの」と認識するのです。病院の当直をしていると1日に数件の「タバコ誤飲」が来院した時もありました。その当時は胃洗浄といって子供の鼻から胃までチューブを入れて生理食塩水で胃袋を洗い、タバコの葉が入っていないかも確認しました。子供は恐怖で泣くので、親御さんも不憫で一緒に泣いてしまう場面もありました。今はタバコの誤飲でも、1本以下であれば胃洗浄は必要はないとされています。ただし、缶ジュースの空き缶を灰皿代わりにし、液体にニコチンやタールが溶け込んだものを飲んでしまうと、ニコチン中毒になる可能性があり、救急を受診した方がいいでしょう。

しかし、最近は喫煙者の減少と住居の西洋化でテーブルが高くなり、子供の手が届かなくなった影響でタバコの誤飲は減ってきました。現在の異物誤飲は「医薬品・医薬部外品」の比率が増え、タバコと1位、2位を争って(?)います。大人が飲んだ薬の残りをそのまま置いておくと、子供が食べ物と思い、誤飲してしまうことがあります。手が届かないよう、管理が必要です。

ゲームが発達し、ボタン電池の誤飲も注意が必要です。新品やまだあまり使っていない高電圧の電池が胃袋に入ってしまうと、胃液の成分でショートし、胃の壁に損傷が起きることがあります。磁石が先についたカテーテルを胃袋まで入れ、取り除く方法がありますが、子供にとっては辛い処置です。

灯油など揮発性のものを誤って飲んでしまうと、肺炎を起こす可能性が強くストーブで使用する場合は厳重な管理が必要です。

乳幼児は何でも口に入れるものです。窒息の原因にもなりかねません。「危険な物を子供の手の届かない場所で管理する」。これは大人の責任でもあります。

交通事故、転落、入浴中の溺れ、火傷(やけど)、そして異物誤飲。常に注意を払うことが必要です。子供に不必要な苦痛を与えてはなりません。

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