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1.「対症療法」とは
「対症療法」という言葉を医師から説明を受ける事は意外に少ないかも知れません。一般の方には「タイショウリョウホウ」は聞き慣れないでしょう。
対症療法とは「症状に対しての治療」という意味です。小児でも大人でも、咳や鼻水の場合は「咳止め」や「鼻水止め」が処方されます。クリニック受診の小児では咳・鼻水の訴えが多いのですが、咳や鼻水の薬は原因が何であっても基本的に同じです。
ウイルスが原因でも風邪薬はウイルスをやっつける訳ではありません。咳、鼻水の強さが5であれば2や3にまで少しでも症状が軽くなるように、という薬です。
風邪薬のCMでは飲めばすぐに症状が無くなるような宣伝をしていますが、あくまでCMです。
運動会や遠足が近いので早く治したい、と来院する家族もいますが対症療法の薬は飲めばピッタリ症状が止まるわけではないのです。鼻詰まりや咳で睡眠中に目覚める、食欲が落ちている、など日常生活に影響があれば「少しでも」楽にしてあげる作用はあるかも知れません。
咳は痰や鼻水など異物を体外に出そうとする正常な防御反応なのです。もし小児に強い咳止めを使えば、痰が気管支に溜まっていき、症状が悪化します。
ウイルス感染での発熱では解熱剤を作用しますが、解熱剤でウイルスをやっつけるわけではないのです。ウイルスの勢いがある数日間は熱が持続することがあります。熱は微生物から身体を守ろうとする免疫反応です。熱が下がらないからと一日に3回受診する家族も珍しくありません。安静も大切な治療です。解熱剤は熱があっても元気であれば必要ないのです。ただ、熱で頭痛、倦怠感や不機嫌で水分も摂れない場合は解熱剤で体温が下がった頃にまずは水分から与えればよいでしょう。熱で寝付けない場合も使ってみます。
小児科医は熱よりも水分が摂れない状態が続くと脱水症を心配します。ウイルスの力が強い時は、解熱剤を使用してもあまり下がらなかったり、下がってもすぐに38℃以上になる場合があります。
雨が降っている時に傘をさしても雨は止みません。傘は外を歩く時の一時的な雨よけで、解熱剤で一時的に熱を下げるのと似ています。雨を止むのを(ウイルスの勢いがなくなるのを)待つしかありません。
人間の風邪はほとんどがウイルス性で、まず抗菌薬を使わないでもたいていは4日目くらいには解熱します。しかし、発熱が5日、6日以上持続すれば、細菌感染の合併(二次感染)を起している場合があるので、採血をし、細菌感染合併の有無を調べる事もあります。
2.「原因療法」とは
「対症療法」に対し、「原因療法」という言葉があります。
原因療法は原因そのものに対する治療です。インフルエンザ・ウイルスに感染し、タミフルという飲み薬、イナビルやリレンザなどの吸入薬を使った人も多いのではないでしょうか。こういう薬はインフルエンザ・ウイルスの増殖を阻害する効果があるので、ウイルスを直接やっつけてくれます。こういう治療を「原因療法」といいます。インフルエンザも高熱が出ますので、解熱剤も
使用されます。インフルエンザの時は「原因療法」と「対症療法」どちらの薬も処方されるのです。
小児科で抗菌薬(抗生剤)が必要な疾患の1つに溶連菌感染症があります。
溶連菌感染では高熱と喉が痛く、赤くなったり、膿が付いたりしますが、抗菌薬が処方されます。
溶連菌という細菌に対して直接の治療ですので「原因療法」と言えます。
他には水痘(水ぼうそう)の場合には原因である水痘・帯状疱疹ウイルスをやっつける抗ウイルス薬が処方されます。
下に簡単に「対症療法」、「原因療法」の図を載せました。