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成人の麻疹抗体価検査とワクチン接種


4月から5月にかけ、新幹線内での麻疹感染が3人の成人(茨城県1名、東京都2名)で確認されました。茨城県では4年ぶり、東京都では3年ぶりの麻疹感染者発生です。

この影響か、当クリニックも成人での抗体価検査希望が増えています。抗体価検査が必要とされる成人は①ワクチン接種歴が不明②麻疹感染の既往が不明な場合です。成人の場合は母子手帳が見当たらない場合、麻疹感染の既往が不明の場合もあります。こういう方はまず、麻疹抗体価を検査し、免疫を持っているか、確認をお勧めします。抗体価が低ければ、麻疹・風疹混合ワクチン(MRワクチン)を接種します。麻疹単独ワクチンではなく、風疹も一緒に入っているワクチンですが、すでに風疹のワクチンが住んでいる方や感染歴がある方も接種は問題ありません。ただし、女性はMRワクチン接種後2か月は避妊が必要です(男性が接種した場合は避妊は必要ありません)。

大学や医療関係の専門学校では入学前や実習前などに各種感染症の抗体価検査を大学や専門学校から指示される場合があります。

麻疹は感染力が非常に強く、1人から10数人へ感染すると言われています。

私の麻疹についての体験談を。20数年前に勤務していた病院で小児の麻疹が流行しました。流行したのは親などの身寄りがない子供たちを預かる児童養護施設の小児でした。身寄りがないため、子どもたちの麻疹のワクチン接種歴や感染歴が不明なこともあり、施設のほとんどの子供たちが麻疹に感染し、毎日、麻疹感染者が施設内、あるいは病院受診時に全く他の患者にも感染してしまいました。小児かも病院もパニック状態になりました。麻疹に感染すると、高熱、咳などでかなりぐったりし、水分も摂取できずつらい状態となります。医者も驚くほどの重症感がありました。また、ある病院で経験したのは麻疹感染後数年以上経過してから発症し、有効な治療法が今でも無く、病状が進行する「亜急性硬化性全脳炎」となった少年を受け持ちました。20-30年前までは麻疹はまだ小児科にはそう珍しくない感染症でした。

しかし、ワクチンの普及によって、麻疹の発生は稀な状態になりました。ではなぜ、何年かに一度、麻疹感染者が発生するのでしょうか?

今回の新幹線内感染はインドから戻った成人が最初だったそうです。おそらく、コロナが明け、海外旅行が再開されたこともあるでしょう。

しかし、麻疹の免疫を持っていれば、麻疹ウイルスがいる場所に行っても感染しないはずですね。少し説明します。

ワクチン接種には①primaly vaccine failureと②secondary vaccine failureという言葉があります。①はワクチンを打っても最初から免疫がつかない、ついてもごく弱く、予防効果がない状態の事です。麻疹の場合は①の人が数%程度いるとのことです。つまり100人接種しても、数人は最初から免疫ができないのです。②はワクチン接種後は充分に免疫があったのに、年月の経過で、免疫が低下し、もはや麻疹ウイルスを予防する免疫が無くなった状態です。

現在の麻疹予防接種はMRワクチンという麻疹と風疹が混ざった混合ワクチン(MRワクチン)を1歳の時に1回目、小学校入学前から1年の間に2回目を接種します。つまり、2回接種することで①の状態の人をカバーする。そして1回目接種で獲得した免疫が弱くなる前に2回目を接種し免疫を再度強くし、同時に長持ちさせることによって②になる状態を避ける、という意味があります。

例えは不適切かも知れませんが、ワクチンによる免疫獲得は人間の記憶力と似ています。例えば、学校で100人いるクラス。授業を受けて翌日に授業内容についての試験。60点以上(免疫獲得)の人が90人(免疫獲得)。でも59点以下で合格点以下(免疫獲得できず)が10人いたとします。この10人がprimary vaccine failureだと例えることができます。次に、何年も経ってから、もう一度同じ試験問題を行います。最初の試験で59点以下の人はおそらく今回も合格点以下でしょう。さらに最初の試験では合格だった90人のうち、20人が合格点以下になったとします。この20人は授業の記憶が時間の経過とともにうすれたのです。これが②のsecondary vaccine failureです。もう少し考えます。では、2回目も合格、つまり接種から長い期間経過しているにも関わらず、最初の1回でまだ免疫が残っている人とはどういう人でしょうか。まず、1回の授業(接種)だけでもずっと免疫が維持できている人もいるでしょう(抜群の記憶力?)。そしてまじめに?授業内容を適宜、繰り返し復習することによって、記憶を維持している人もいるのです。昔は今よりも麻疹感染者が多く、普段の生活で無意識に感染者に接触する機会がたびたびあったのです。自分も気が付かないうちに「復習」をして、記憶力をキープしていたのです。ところが、ワクチン接種が普及したおかげで、この復習をする機会が現在は減ったのです。

以上の様に、現在は小児については1歳と小学校入学前の2回、麻疹風疹ワクチン混合ワクチン(MRワクチン)を接種するので、小児の間はまず麻疹感染の可能性は少ないかもしれません。ただし、成人については免疫が弱くなっている人も一定数いるでしょう。もし、麻疹抗体価の検査をご希望であれば、当クリニックまでご相談ください。

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