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「咳」というのは大人も子どももよくある一般的な症状です。普段の診察でもホクナリンテープ(一般名:ツロブテロール貼付薬)という体に貼る薬がよく咳の薬として処方されます。
内服を嫌がったりする子どもに「体に貼るだけ」、という手軽さもあり、親御さんにも喜ばれます。貼ったまま登園、園ではがれない様にさらに上から絆創膏などを貼る指示もあるようです。
しかし、本来、このホクナリンテープ(以後、テープとします)は「咳止めではない」のです。あまりにも普及しすぎたので、いつの間にか「テープ=咳止め」という意識ができてしまいました。
このテープの作用は、気管支平滑筋のβ2受容体を刺激し、「狭くなった気管支を拡張させる」ことです。
子どもの場合、気管支が狭くなる状態というのは、呼吸のたびに「ヒューヒュー」や「ゼーゼー」があり、息が早かったり、呼吸が苦しくなる場合で主に①気管支喘息や②気管支炎です。こういう場合はこのテープの効果があるわけです。学会では喘息と診断されている場合は、発作の「予防」として使用が認められています。「発作時」ではなく、「予防」として使います。なぜなら、下の図のように、このテープは効果が出るまでに数時間かかります(そのかわり、効果が24時間は持ちます)。喘息発作時はすぐに効果が出る気管支拡張薬の「吸入」を行います(同じβ2刺激薬ですが速効性があります)。急には効果がない代わりに毎日使用すれば一定期間の予防効果があります。
実は気管支喘息とは診断されていないのに、「風邪」としてこのテープを咳止めとして使用されているケースがかなりあります。もちろん、喘息でなくても気管支炎の時にも使用可能ですが、家で横にいても聞こえるような「ゼーゼー」があるかないか、医者の聴診の音など、総合的に判断し、適切な使用が必要です。
どの薬も副作用を考えなければなりません。このテープはβ刺激薬の中でもβ2という刺激薬で、心臓などへの刺激は少ないのですが、動悸(心臓がドキドキする)や手が震えるなどの副作用もあります。β1作用も弱いながらも若干でます。
気管支炎では気管支粘膜の肥厚や痰で気道が狭くなります。痰が外に出るように咳が出るのですが、痰は粘稠性があり(ねっとりしている)、強い咳でもなかなか出てくれません。子どもの気管支は大人より元々狭いので、なおさら外に出せません。
聴診で痰が絡む音や気管支が狭い音があれば、空気の通りが少しでも良くなるようにこのテープを使う場合があります。「モーニング・ディップ」と言われる「明け方に気管支が狭くなり、呼吸機能が悪化する」という状態があります。この状態は喘息の人にその程度が強く、このため明け方に発作が多いのです。しかし、喘息ではない人でも明け方の気管支の狭窄がある程度あるようです。喘息ではない子どもで夜間から明け方に咳が多い場合はこういう状態が一因かも知れません。
下の図は寝る前にテープを貼れば明け方4時ころのモーニング・ディップがおこる時間帯にちょうど薬が効きますよ、という模式図です。
上述のように、テープは喘息の発作「予防」が目的。そして痰の排出や気管支の拡張を必要とする気管支炎の場合でも短期間、使用する場合があります。
痰が空気の通りを邪魔している場合は、このような気管支拡張薬(内服薬もあります)と一緒に去痰薬としてカルボシステイン(ムコダイン)やアンブロキソール(コサールやムコソルバン)がよく処方されます。
最後に、使用しやすい事もあり、テープを希望される親御さんも多いのですが、上記のような副作用も考えながら、必要な場合にだけ、必要な期間だけ使用しましょう。